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噛み合わせが深いと体に影響はあるのか?
──“ディープバイト”が引き起こす意外なトラブルを歯科医が解説──
「噛み合わせが深いと言われたけど、何が問題なの?」
「治療したほうがいいのか、それとも様子見でいいのか…?」
歯科で“噛み合わせが深いですね”と説明されても、
自覚症状がないと「本当に治す必要があるの?」と疑問に思う方は多いです。
結論から言うと、
噛み合わせが深い状態は、口の中だけでなく、体全体に負担をかけることがあります。
もちろんすべての人に問題が出るわけではありません。
しかし、深い噛み合わせが“長年続いた場合”には、
以下のような不調のきっかけになるケースがあります。
この記事では、
- 噛み合わせが深い状態とは何か
- 体にどんな影響が出るのか
- 大人と子どもで何が違うのか
- 矯正で治すメリット
- 放置すると何が起きやすいのか
を、患者さん目線でわかりやすく解説します。
目次
■ 1. そもそも「噛み合わせが深い」とはどういう状態?

正常な噛み合わせでは、
上の前歯は下の前歯に2~3mmだけ重なるのが理想と言われています。
一方、4mm以上深く覆いかぶる状態を
“ディープバイト(過蓋咬合)”と呼びます。
よくある特徴は…
- 下の前歯がほとんど見えない
- 上の前歯が下の歯茎に当たりやすい
- 顎が後ろに押し込まれる感覚がある
- 噛む力が前歯に集中しやすい
見た目では分かりにくいですが、内部では色々な負担が起こっています。
■ 2. 噛み合わせが深いと体に起きる“5つの影響”

ディープバイトは噛む力のバランスが崩れるため、
長期的には以下のトラブルにつながる可能性があります。
① 顎関節への負担が増えやすい
深い噛み合わせでは、
“下あごが後ろに押し込まれる形”になりやすいのが特徴です。
これにより、
- 顎がカクカク鳴る
- 口が開けにくい
- 朝起きると顎がだるい
- 顎周りの痛み
など、顎関節への負担が出やすくなります。
もちろん全員ではありませんが、
顎関節症の患者さんには“噛み合わせが深いケース”が多いのは事実です。
② 前歯のすり減り・歯の破損が起こりやすい
噛み合わせが深いと、
上の前歯の裏側と下の前歯の先端が強く当たりすぎることがあります。
その結果、
- 前歯がすり減る
- かけやすくなる
- エナメル質が薄くなる
- 冷たいものがしみる
といった問題が起きることがあります。
“前歯だけ異常にすり減っている”
という方は、深い噛み合わせが原因かもしれません。
③ 歯茎を噛んでしまうケースもある
噛むたびに下の歯茎を上の前歯で噛んでしまい、
歯肉炎・出血・痛みが起こる患者さんもいます。
ひどい場合は、
前歯の裏側にくぼみ(咬耗)や傷ができることもあります。
④ 姿勢が前傾しやすい(猫背と関係)
深い噛み合わせの人は、
顎が後ろに引き込まれるため、バランスを取ろうとして
**頭が前に出る“前方頭位姿勢”**になりやすい傾向があります。
これが長期間続くと…
- 首こり
- 肩こり
- 片頭痛
- 巻き肩
などに発展するケースもあります。
あくまで“傾向”ですが、
体のズレは連鎖しやすいため、噛み合わせが原因で姿勢が乱れる人は珍しくありません。
⑤ 噛む筋肉が疲れやすく、顔がこわばる
深い噛み合わせでは、噛むときの筋肉(咬筋・側頭筋)が使われる範囲が偏りやすく、
- 食いしばり
- 歯ぎしり
- 顔のこり
- エラが張る
といった症状が出やすくなります。
とくに歯ぎしりしやすいタイプは注意が必要です。
■ 3. 子どもの“深い噛み合わせ”は放置厳禁
子どもの場合は、
噛み合わせの深さがあごの成長方向に悪影響を与えることがあります。
【悪い影響の例】
- 下あごが十分に前に成長できない
- 下の前歯が内側に押され、ガタガタになる
- 顔がやや縦長に成長しやすい
- 前歯で噛みにくい癖がつく
小児期は顎の成長が大きく変わるため、
“深い噛み合わせは早めの介入が効果的”とされています
■ 4. 大人の場合は「体の負担を軽減する」ための矯正が有効
大人は骨の成長が終わっているため、
深い噛み合わせが自然に改善することはありません。
しかし矯正で…
- 顎関節の負担が軽くなる
- 前歯のすり減りを防げる
- 姿勢への悪影響が減る
- 噛む力のバランスが整う
- 食いしばりの悪循環が改善しやすい
といったメリットがあります。
“見た目のための矯正”ではなく、
機能のための矯正が必要になるケースがあるのが深い噛み合わせです。
■ 5. 深い噛み合わせを放置するとどうなる?
すべての人に症状が出るわけではありませんが、
放置すると以下のような問題に発展する可能性があります。
- 前歯のすり減りが進む
- 顎関節の負担増
- 歯並びが年齢とともに崩れやすい
- 食いしばりが慢性化
- 顔の筋肉の緊張が強くなる
- 姿勢が悪くなりやすい
“今は痛くなくても、10年後にトラブルになる”
というケースが多いのがディープバイトの特徴です。
■ まとめ:噛み合わせが深いと、口の中だけでなく体にも影響する
噛み合わせが深いことは、
単に見た目の問題ではなく、体のさまざまな部分に影響を与えることがあります。
✔ 顎関節に負担がかかる
✔ 前歯がすり減りやすい
✔ 姿勢が乱れやすく肩こりの原因になる
✔ 食いしばり・歯ぎしりが起こりやすい
✔ 子どもでは顎の成長に影響
早めにチェックすることで、
“将来のトラブルを予防できる噛み合わせ”をつくることができます。
気になっている方は、一度専門の矯正歯科で
「噛み合わせの深さ」「顎の動き」「筋肉の状態」
を総合的に見てもらうことをおすすめします。
参考文献
・Proffit WR: Contemporary Orthodontics(過蓋咬合と機能)
・Okeson JP: Management of Temporomandibular Disorders
・矯正歯科学会:ディープバイトの診断基準
・日本顎関節学会 ガイドライン











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