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歯ぎしりが歯列に与えるダメージ──知らないうちに進む“静かなトラブル”
「朝起きると顎がだるい」「歯がしみるようになった」「なんとなく歯並びが変わった気がする」
このような悩みを抱える方の中には、睡眠中の“歯ぎしり”が原因となっているケースが少なくありません。
歯ぎしりは、医学的には ブラキシズム と呼ばれ、多くの人が気づかないうちに行っています。
実は、大人の約8〜15%が睡眠時に歯ぎしりをしていると言われ、ストレス社会の現代では増加傾向にあります。
歯ぎしりは「音がうるさい行為」ではなく、歯並び・顎関節・筋肉・歯肉などに多くの負荷をかける行為です。
放置すると、矯正治療の効果が弱まったり、後戻りの原因になったりするため、歯科では非常に重要視されています。
目次
1. 歯ぎしりはどれほど強い力がかかっているのか?

通常、私たちが食事をするときの噛む力は 20〜40kg 程度とされています。
しかし歯ぎしりでは、無意識に筋肉を最大限働かせてしまうため、その約2〜5倍の力(100kg近く) が歯に加わることもあります。
さらに、歯ぎしりは数秒間ギューっと噛み締め続けたり、ギリギリと横にこすったりするため、
歯・骨・歯ぐきすべてに大きな負担がかかります。
矯正治療後の歯はまだ安定していないため、歯ぎしりの有無は“後戻りのリスク”に直結します;
2. 歯ぎしりによって歯列に起きる具体的なダメージ
① 歯がすり減り、かみ合わせが変わる
歯ぎしりの最も多い影響が咬耗=歯のすり減りです。
歯が丸くなったり平らになったりするだけでなく、エナメル質が欠けて象牙質が露出すると、
知覚過敏・歯の欠け・割れにつながります。
そして、歯の形が変われば かみ合わせの高さも変わります。
すると上下の歯が正しく噛み合わず、顎がずれていくこともあります。
② 歯が揺れ、歯列全体が乱れる
強い歯ぎしりは歯に“横方向”の力をかけるため、
前歯が前に広がってきたり、傾いたり、隙間ができたり することがあります。
特に、
- 前歯が前に倒れやすい
- 歯周病がある
- 骨が薄い
といった方は、歯列の乱れが進行しやすい傾向があります。
また、矯正後の歯は動きやすいため、後戻りの大きな原因として歯ぎしりが挙げられることも珍しくありません。
③ 歯肉の退縮を招く

歯ぎしりで連日強い力がかかると、歯を支える骨に負担がかかり、
歯ぐきが下がる=歯肉退縮 が進行しやすくなります。
歯ぐきが下がると、
- 歯が長く見える
- 知覚過敏が悪化
- 歯の根が虫歯になりやすい
といった審美的・機能的トラブルに繋がります。
④ 歯列矯正の治療計画に影響する
歯ぎしりが強い人は、矯正中も歯や装置に負荷がかかるため、
- 歯が予定どおりに動きにくい
- ミニスクリューが安定しにくい
- ワイヤーやブラケットが外れやすい
といった問題が起こることがあります。
治療期間が延びるだけでなく、歯並びの仕上がりにも影響するため、矯正歯科では歯ぎしりの有無を必ず確認します。
3. なぜ歯ぎしりは起こる?原因をやさしく解説
歯ぎしりの原因は一つではなく、複数が絡み合っています。
● ストレス・精神的緊張
最も多いとされる原因です。
ストレスを発散する無意識の行動として起こることがあります。
● 噛み合わせの不調和
かみ合わせが不安定だと、顎が“正しい位置を探すように”歯ぎしりが起こる場合があります。
● 筋肉の癖・食いしばり習慣
日中の食いしばり癖が強いと、睡眠中も同じ筋活動が続く傾向があります。
● 飲酒・喫煙・カフェイン
睡眠の質が下がることで歯ぎしりが発生しやすくなります。
● 子どもの成長期の歯ぎしり
成長に伴う顎の変化で起こることがあり、必ずしも悪いわけではありませんが、
強い歯ぎしりが続く場合は注意が必要です。
4. 歯ぎしりが疑われるサイン
寝ている自分では気づきにくい歯ぎしりですが、以下のチェック項目に当てはまる場合は要注意です。
- 朝起きると顎が疲れている
- 頬の内側に噛んだ跡(線)がある
- 歯が平らになっている
- 歯にひび割れがある
- 知覚過敏がある
- 破れやすいマウスピースをよく壊す
- 家族から歯ぎしりの音を指摘された
一つでも当てはまれば、歯ぎしりの可能性があります。
5. 歯ぎしりへの対策
① ナイトガードの使用

睡眠中にマウスピースを装着することで、
歯への負荷を軽減し、歯列の乱れを抑える 効果があります。
矯正をしていない方にも広く用いられる方法です。
② 生活習慣の見直し

- 寝る前のスマホを控える
- カフェインの量を減らす
- ストレスケア
などは間接的に改善につながることがあります。
③ かみ合わせの評価
噛み合わせのズレが原因のケースでは、矯正治療で改善が期待できることもあります。
ただし、すべての歯ぎしりが矯正で治るわけではありません。
④ 日中の食いしばりチェック
歯ぎしり予備軍の方は、日中も無意識に噛み締めていることが多いため、
「上下の歯を離す習慣づけ」が有効とされています。
6. 歯ぎしりを放置しないことが“将来の歯並びを守る”
歯ぎしりは無意識下で行われることが多いため、放置していても自然に治ることはあまりありません。
特に矯正治療中・矯正治療後の方は、歯ぎしりの有無が歯並びの安定に直結します。
- 歯がすり減る
- 歯列が乱れる
- 後戻りが起きる
- 顎関節症が悪化する
こうしたトラブルを防ぐためにも、気になる症状があれば早めに歯科で相談しましょう。
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参考文献
- 日本歯科医師会「ブラキシズムと歯ぎしりに関する基礎知識」
- Okeson JP. Management of Temporomandibular Disorders and Occlusion.
- Lobbezoo F, Ahlberg J. “Bruxism definition and treatment.” J Oral Rehabil.
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯ぎしり」











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