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顎の成長はいつ止まる?矯正歯科医が語る成長時期と成長ホルモンの影響

医院ブログ 2025/10/24
名古屋西矯正歯科クリニック 平澤建太朗

はじめに

矯正治療において、「顎骨(上顎・下顎)が成長する時期」が非常に重要な鍵になります。顎の成長期を見極めることで、より効果的な矯正計画が立てられ、抜歯を避けたり、骨格のズレを補正したりする可能性が高まります。

しかし、顎の成長には個人差が大きく、成長が止まる年齢、性差、さらには成長ホルモンの影響なども絡んでいます。本記事では、顎骨の主要な成長時期とそのメカニズム、成長ホルモンとの関係、そして矯正歯科医が考慮すべき点について解説します。


顎骨の成長パターンと成長終了時期

上顎と下顎で成長時期が異なる

顎骨の成長は、上顎骨と下顎骨で時期やスピードが異なります。

  • 一般に、上顎骨の成長は比較的早く進み、10歳前後で成長がほぼ完了に近づく場合もあります。矯正歯科ネットの記事でも、上顎は10歳くらいまでにほぼ成長が終わるという記述があります。
  • 下顎骨の成長はより遅く、思春期以降まで続く傾向があります。男子では18歳ごろ、女子では13歳ごろに下顎の成長がほぼ完了するという見解もあります。

たとえば、矯正歯科ネットでは、顎の成長は18歳頃まで続き、歯の成長(永久歯列完成)は14歳頃にほぼ終わるとしています。

また、予防矯正関連の歯科医院サイトでは、「下のあごは平均11才〜14才で成長が止まり始める」との説明も見られます。

個人差と性ホルモン・性差

顎の成長がいつ止まるかは、性別や個々人の発育パターン、生理的成熟に依存します。

  • 女子は一般に思春期が早く始まるため、顎の成長も男子より早く終わる傾向があります
  • 骨年齢(手根骨や手首のX線所見)を使って生理的成熟度を評価し、成長余地を予測することが矯正診断では一般的です。

つまり、「暦年齢だけで判断するのは危険」であり、成長の進行具合を総合的に見る必要があります。


成長ホルモンと顎骨成長との関係

顎骨の成長はホルモンや咀嚼刺激などの影響も受けます。以下に注目すべき関係性を紹介します。

成長ホルモン補充療法と矯正研究

  • 広島大学を中心とした研究では、成長ホルモン補充療法と機能矯正装置を併用する治療法の確立を目指すプロジェクトが行われています。顎頭軟骨成長への影響などを解析することが目的とされています。
  • 一部の疾患例(低身長症など)では、成長ホルモン分泌不全と顎顔面骨の発育不全が併存することもあり、矯正治療を行う際にはそれらを考慮する必要があるという記述も見られます。たとえば、保険診療での矯正の説明の中に、成長ホルモン分泌不全性低身長症における顎発育への影響が挙げられています。

咀嚼力・骨刺激と骨代謝

  • 顎骨は咀嚼力という機械的刺激を受けることで、骨の形成や再構築が促されるメカニズムが注目されています。
  • 日本の医療研究開発機構による発表では、噛む力が顎の骨を造り変える分子メカニズムが明らかにされ、骨細胞がつくる IGF‑1(インスリン様成長因子1)が顎骨の形態変化に寄与することが示されました。
  • つまり、食生活・咀嚼習慣・矯正装置によってかむ力が変われば、顎骨の成長や維持にも影響を及ぼしうる、という先端的な知見があります。

このような研究はまだ臨床レベルでは一般化されていませんが、将来的には、ホルモン補充や咬合刺激を応用した矯正戦略に繋がる可能性があります。


矯正歯科的に意識すべきポイント

顎の成長が関与する矯正治療では、以下の点が特に重要になります。

成長期を逃さないこと

  • 顎骨に成長の余白があるうちに適切な介入をすることで、抜歯リスクを低下させたり、骨格性のズレを矯正できる可能性があります。
  • たとえば、予防矯正では上顎の拡大や機能矯正装置を使って顎を誘導し、将来の歯列スペースを確保することがあります。
  • 顎の成長限界を超えた後には、矯正だけでは対応できず、外科矯正が必要になるケースもあるため、成長期の判断が治療成否を左右します。

成長予測と診断材料の使いこなし

  • 骨年齢、手根骨X線、側頭頭部X線(セファログラム)顎骨形態指標などを組み合わせて、患者個々の成長可能性を把握することが大切です。
  • 顎骨の成長方向(前方・下方・後退など)を予測することも、治療計画立案で重要となります。機械学習を使って顔面成長方向を予測する研究もあります。

ホルモン状態・全身状態との関連

  • 成長ホルモン異常、ホルモンバランス異常、内分泌疾患を有する患者の場合、顎骨成長に影響を及ぼす可能性があるため、矯正治療時にそれらを把握しておく必要があります。
  • 成長ホルモン補充療法と機能矯正装置の併用は、研究レベルでその有効性が検討されていますが、臨床への応用には慎重な検討が必要です。

継続観察とリスクマネジメント

  • 思春期後にも顎骨成長がわずかに続くことがあるため、矯正後も顎変化に注意して定期的なモニタリングを行うことが望ましいです。
  • 矯正途中で「思ったより顎が追いつかない」「下顎が追加成長した」などの変化が観察されることもあり、治療戦略の見直しが必要になることがあります。たとえば、下顎成長過剰(将来的に受け口傾向など)に備えて慎重に治療を進めるべきケースもあります。


まとめ

  • 顎骨の成長は上顎・下顎で時期が異なり、上顎の成長は10歳前後まで、下顎は思春期以降まで持続する傾向が強い。
  • 成長ホルモンや咀嚼刺激(噛む力)は顎骨の形態変化に影響を与える可能性があり、将来的にはこれらを活かした矯正戦略が期待されている。
  • 矯正歯科治療を成功させるには、顎の成長可能性を見極めた時期選び、成長予測診断、進行中のモニタリングが不可欠
  • 成長期を逃すと、矯正だけで対応できない骨格変化を伴うケースもあり、最適な治療効果を得るためには“早めの判断と継続観察”が鍵となる


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参考文献

  1. 矯正歯科ネット「顎の発達や歯の成長は何歳まで?」
  2. 矯正歯科ネット(まとめ記事)「顎の成長は18歳頃、歯の成長は14歳頃にほぼ完了」
  3. とも歯科 矯正歯科クリニック「顎の成長時期」
  4. Horiguchi Dental Clinic「下顎は平均11才〜14才で成長が止まり始める」
  5. AMED「噛む力が顎骨を造り変える分子メカニズム」 
  6. KAKEN「成長ホルモン補充療法と機能的矯正装置を併用する研究

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