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口の中の炎症が脳に悪影響?──歯周病と認知症の深い関係
「歯ぐきが腫れている気がするけど、痛くないし大丈夫かな…」
「歯医者は痛くなったら行けばいい」
そんな風に思っていませんか?
実は、口の中の炎症―― とくに歯周病は、単なる歯の問題ではなく、脳の働きにまで悪影響を与える可能性があるという研究が、世界中で次々と報告されています。
「口の中の炎症がなぜ脳に影響するのか?」
「それはどんな病気と関係するのか?」
「私たちが今できる予防法は?」
今回のブログは、口腔と脳の“つながり”について、わかりやすくご紹介します。
目次
歯周病とは
歯医者や最近ではTVなどでもよく耳にする歯周病。
歯周病は、歯を支えている歯ぐきや骨が、細菌によって炎症を起こす病気です。初期段階では「歯肉炎」、進行すると「歯周炎」と呼ばれ、最終的には歯が抜ける原因にもなります。
特徴的なのは、痛みが少ないまま進行すること。気づかないうちに炎症が長期間続いてしまうケースが多いのです。
そしてその「慢性炎症」が、実は全身にさまざまな悪影響を及ぼすことがわかってきました。
炎症が脳に届く?驚きのメカニズム
1. 炎症性物質が血流に乗って脳へ届く
歯周病が進行すると、炎症によって**サイトカイン(炎症性物質)**と呼ばれる化学物質が大量に作られます。これらは血液中に入り、脳内に届いて炎症反応を引き起こすとされています。
特に「IL-1β」「TNF-α」「IL-6」などのサイトカインは、神経細胞の働きを阻害したり、脳内で異常な免疫反応を引き起こすことが研究で示されています。
2. 血液脳関門の破壊
通常、脳は「血液脳関門(blood-brain barrier)」によって外部からの有害物質の侵入を防いでいます。
しかし、慢性的な炎症によりこのバリアが損なわれ、炎症性物質や細菌由来の毒素が脳に侵入しやすくなると考えられています。
歯周病と認知症の関連を示す研究
● アルツハイマー型認知症との関係
アメリカのニューヨーク大学などの研究では、アルツハイマー病患者の脳から歯周病菌(Porphyromonas gingivalis)のDNAが検出されたという衝撃的な報告がありました(Dominy et al., 2019)。
さらに、歯周病菌が出す毒素(ジンジパイン)は、脳内の神経細胞を破壊し、アミロイドβの沈着を促進するとされており、これはアルツハイマー病の進行因子の一つとされています。
● 日本の疫学研究でも相関あり
・歯周病がある高齢者は、認知症の発症率が約1.5倍高い
・歯を失っても、入れ歯などで噛めていればリスクは軽減
(出典:厚生労働省「高齢者の歯科保健と認知症」報告, 2020)
他にもある!口腔内炎症が関係する脳の病気
- 脳卒中(脳梗塞):歯周病菌が血管を通じて脳の動脈に到達し、炎症や血栓形成を促進する可能性が指摘されています。
- うつ症状・気分障害:炎症性サイトカインがセロトニンなど神経伝達物質のバランスを乱すことにより、情緒の不安定に影響するとする説も。
- パーキンソン病:一部の研究では、慢性歯周炎とパーキンソン病との関連も示唆されています(まだ議論は途上)。
口の炎症を防ぐ=脳を守る!今できる5つの対策

1. 定期的な歯科検診(3〜6ヶ月に1回)
- 目に見えない炎症を早期発見。歯石除去も効果的。
2. 正しい歯磨き
- 歯ぐきとの境目を意識し、1日2〜3回丁寧に。
- 電動歯ブラシやフロスも活用を。
3. 生活習慣の見直し
- 喫煙、過度な飲酒、糖質過多は歯周病を悪化させやすい。
4. ストレス管理
- ストレスは免疫力を下げ、炎症を長引かせます。リラックスや睡眠を大切に。
5. 全身の健康チェックも忘れずに
- 糖尿病や高血圧などの持病がある人は特に注意。歯周病と相互に悪化させる可能性があります。
まとめ
【口の健康が脳の健康を守る時代】
歯周病や口腔内の炎症は、「ちょっとした不調」と軽視されがちですが、**脳への影響を持つ“全身病の入口”**でもあります。
「口の健康は、脳の健康」
――これは単なるキャッチフレーズではなく、医学的な根拠に基づいた重要な認識です。
今日から、歯みがきの時間をもう少し丁寧に。
それが、将来の自分自身や家族の脳を守る第一歩になるかもしれません。
参考文献 出典
- Dominy, S. S., et al. (2019). Porphyromonas gingivalis in Alzheimer’s disease brains: Evidence for disease causation and treatment with small-molecule inhibitors. Science Advances, 5(1).
- 厚生労働省(2020). 「高齢者の歯科保健と認知症に関する報告」 https://www.mhlw.go.jp
- Ide, M. & Harris, M. (2011). Relationship between periodontal disease and Alzheimer’s disease. Periodontology 2000, 60(1), 124–133.
- 日本歯周病学会. 「歯周病と全身疾患」 https://www.perio.jp
- Kamer, A. R. et al. (2009). Inflammation and Alzheimer’s disease: Possible role of periodontal diseases. Alzheimer’s & Dementia, 4(4), 242–250.











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