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矯正後のリテーナーの重要性:後戻りを防ぐための正しい使い方
歯列矯正が終わり、長い治療期間を経て整った歯並びを手に入れた瞬間は、多くの患者さんにとって最も嬉しいタイミングです。
しかし、ここで治療が「完了」したわけではありません。矯正治療には大きく分けて動的治療(歯を動かす期間)と保定治療(歯を安定させる期間)の2つがあり、リテーナーを使用する保定期間は、仕上がった歯並びを長期間維持するために欠かせない重要なプロセスです。
矯正後の歯は、見た目以上に不安定です。歯を支える骨や歯周組織は、まだ新しい位置に慣れておらず、元の位置へ戻ろうとする「後戻り」が自然に起こります。
この後戻りを防ぐ主役こそが「リテーナー」です。しかし、リテーナーは正しく使用されなければ十分な効果を発揮しません。
本記事では、リテーナーの重要性、種類、正しい使い方、よくあるトラブル、上手な習慣化のコツまで詳しく解説します。
目次
■ なぜ後戻りは起こるのか?
後戻りの原因は複数ありますが、最も大きい要素は歯周組織の再構築の遅さです。矯正治療によって歯が動くと、骨や歯根膜は新しい位置へ適応するまでに数カ月〜数年かかります。この期間中は特に歯が動きやすく、少しの力でも位置が変わってしまうことがあります。
また、舌の癖、頬の圧力、噛み合わせの変化、加齢、生活習慣なども影響します。
特に舌突出癖(舌で歯を押す癖)や口呼吸があると、後戻りを大きくする原因となります。

歯列矯正後に歯が元の位置へ戻るのは、患者さんの努力とは無関係に起こる「生理的反応」であり、決して珍しいことではありません。そのため、矯正の成功には必ずリテーナーが必要になるのです。
■ リテーナーの種類と特徴
リテーナーには大きく分けて3つのタイプがあります。どれが合うかは患者さんの歯並びやライフスタイル、矯正医の方針によって異なります。
① マウスピース型(クリアタイプ)

透明で目立たず、装着していても気づかれにくいタイプ。近年最も人気があります。
メリット
- 装着時の見た目が良い
- 歯磨きや洗浄が簡単
- 違和感が少ない
デメリット: - 紛失しやすい
- 変形や破損のリスク
- 装着をサボるとすぐに入らなくなる
② ワイヤー固定式(フィックスリテーナー)

前歯の裏側に細いワイヤーを貼り付けるタイプで、取り外し不可。
メリット
- 常に固定されているため後戻り防止効果が高い
- 装着忘れの心配がない
デメリット: - 歯磨きがやや難しい
- ワイヤーが外れた場合はすぐに修理が必要
- 補助的にマウスピース併用が必要なこともある
③ プレート型(ホーレータイプ)
昔からあるワイヤーとプラスチックの構造のリテーナー。
メリット
- 調整しやすい
- しっかりした保持力
デメリット: - 見た目の違和感が大きめ
- 発音に影響することもある
■ リテーナーの正しい使い方:後戻りを防ぐポイント
リテーナーは「どれだけ歯を新しい位置に固定できるか」で効果が決まります。そのため、以下のポイントが重要になります。
① 最初の半年〜1年は“フルタイム装着”が基本
一般的に、矯正直後は1日20〜22時間の装着が推奨されます。
外すのは食事と歯磨きの時のみ、というのが基本です。
② 1年以降は“夜間のみ装着”が基本だが油断は禁物
骨が安定してくると装着時間は短縮できますが、完全に外して良いとは限りません。
歯は一生少しずつ動いていくため、夜だけでも長期的に使用することが理想です。
③ きつくなったら要注意:後戻りのサイン

「最近はめるとキツい」「入りにくい」は後戻りの初期症状です。
この場合、装着時間を増やすことで戻せることもありますが、自己判断せず歯科医院で診せるのが安心です。
④ リテーナーの保管と清掃は丁寧に
- ケースに入れて保管
- 熱湯に浸けない(変形の原因)
- 毎日のブラッシングと定期的な洗浄剤使用
- 食事中のティッシュ包みは絶対に避ける(紛失の最も多い原因)
■ リテーナーに関する「よくあるトラブル」
● 1週間装着しなかったら入らなくなった
後戻りが進んでしまい、その形にリテーナーが合わなくなった状態です。無理にはめると破損するため、早めの受診が必要です。
● ワイヤー固定式が外れた
前歯が急速に動き始める可能性が高いため、数日の放置でもリスクがあります。
すぐに連絡し、修正または補助リテーナーを装着します。
● 発音しにくい・痛い
最初は違和感があるものですが、数日で慣れるケースが大半です。痛みが続く場合は調整が必要となります。
■ “保定を続けられる人=綺麗な歯並びを維持できる人”
矯正は「歯を動かす期間」よりも「動かした結果を維持する期間」の方が重要と言っても過言ではありません。せっかく時間と費用をかけて整えた歯並びも、保定を怠ると数カ月で変化し、数年で元に戻ってしまうことがあります。
リテーナーは決して“面倒な後処理”ではなく、あなたの歯を守るための“最終防衛ライン”です。
正しく使い続ければ、綺麗な歯並びは一生の財産となります。
参考文献
- Effectiveness of Different Retention Protocols in Preventing Posttreatment Relapse After Comprehensive Orthodontic Treatment, PubMed. “Group C(永久リテーナー)が最小の後戻りを示した” PubMed
- Orthodontic retention: a systematic review, PubMed. “保持戦略の効果に関する系統的レビュー” PubMed
- ORTHODONTIC RETENTION. Studies of retention capacity, cost-effectiveness and long-term stability, PubMed. “長期安定性とコスト効率性の比較” PubMed
- Relapse and inadvertent tooth movement post orthodontic treatment in individuals with fixed retainers: A review, PubMed. “固定リテーナー後の不意な歯移動と後戻り” PubMed
- Fixed Orthodontic Retainers: A Review, Turk J Orthod. “固定リテーナーのレビュー論文” トルコ矯正歯科学雑誌
- Enhancing Orthodontic Renewal and Retention Techniques: A Systematic Review, PMC. “QOLなどを含めた様々なリテーナーの技術評価” PMC
- Retention and stability – taking various treatment parameters into account, PubMed. “6年後でも後戻りがあるが、長期保持装置があると安定性が向上” PubMed
- [Retention and relapse. Review of the literature], PubMed. “歯列矯正後の後戻りの頻度と要因をまとめた文献レビュー” PubMed
- Evaluation of Orthodontic Retention Protocols and Post-Orthodontic Relapse, Journal of Pharmacy and Bioallied Sciences. “固定リテーナーが最も効果的という結論” Lippincott Journals
- Emerging Trends in Orthodontic Retention: A Comprehensive Review, Saudi Journal of Oral and Dental Research. “保持期間、患者習慣、リテーナータイプなどの包括的レビュー” Scholars Middle East Publishers











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